植物の癒し効果と園芸の多面的機能を利活用した代替医療の1つである園芸療法で用いる木製のレイズドベッド(作業面となる土面を高くし身体への負荷を軽減する園芸設備、以下ベッド)の設計・製作に必要な基礎データを得るため、つぎのような実験を行った。1.作業しやすい高さと手が届く距離:車いす使用者を想定した内観報告による測定を、大学生男女各25名の計50名を対象に行った。作業しやすいベッドの高さは、男性は75cm及び80cmの2種、女性の多くは75cmであった。ベッド側面に取り付ける補助作業台の使いやすい高さは、男性の場合、ベッドの高さ75cm及び80cmともベッドと同じ高さ(0cm)あるいは5cm下方(-5cm)でほぼ同数であった。女性は75cmで0cmが多く、80cmでは0cmと-5cmがほぼ同数であった。楽に手が届き作業できる距離は、男女とも高さに関係なくベッド前縁からおおよそ30cmであった。2.筋電図及び腰部椎間板圧迫力:大学生男女9名を被験者とした。測定筋は上腕二頭筋、三角筋、僧帽筋及び脊柱起立筋とした。筋電位の比較には最大随意収縮(MVC)に対する比%MVCを用いた。三角筋において70cmと85cmの高さのベッド間で有意な差がみられたが、他の筋には高さの影響はなかった。しかし、僧帽筋は他の筋に比べて大きな値(22.5%)をとることから、長時間の作業は肩痛の原因となる可能性がある。腰部椎間板圧迫力の推定値は0.25kN~1.3kNの範囲にあり許容限界値とされる3.4kN以下であった。3.木材加工の心理効果:気分プロフィール検査(POMS)及び唾液中コルチゾール濃度を指標に調べた。男性4名(平均年齢68歳)及び女性5名(61歳)を被験者として、プランターの設計、製作及び花の寄せ植えの各作業(計11回)を行った。毎作業後にPOMSの活気(V)尺度が大きく増加し、唾液中コルチゾール濃度が減少することから、木材加工作業は気分・感情を改善するとともにストレスを軽減させる効果がある。
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