研究概要 |
高齢者の身体負荷を軽減した園芸療法用木製設備の設計・製作に必要な基礎的なデータを得るための実験を行った。得られた結果は次のとおりである。1.立位姿勢による作業しやすいレイズドベッドの高さと手が届く距離:作業しやすい高さは,学生及び健常高齢者とも男性は85±5cm,女性は80±5cmであった。介護福祉施設通所者からは75cmの高さがよいとの訴えが多かった。作業しやすいおおよその高さは、身長の1/2あるいは肘頭下縁高から15cm~20cm低い高さが目安となる。楽な作業姿勢で手が届く距離は、健常高齢者及び学生ともベッドの高さ、男女及び身長に関係なく、ベッド前縁から39cmの範囲であった。デイサービス施設利用者は前縁から50cmであった。一方、少し努力すれば手が届く距離は健常高齢者の42.9cmに対して学生は56.6cmであり、両者に15cm程度の差がみられた。後期高齢者の場合には楽に手が届く距離との差はなかった。2.座位姿勢による作業しやすい室内用作業台といすの高さ:プランターを用いた園芸作業を、高さが20cm~50cmの範囲で10cm刻みとなる4種類の作業台と、高さが20cm~40cmの範囲で10cm刻みとなる3種類のいすを組み合わせて行い、どの組み合わせが使いやすいかを調べた。その結果、差尺(座面から作業点までの距離)が17.5cm及び27.5cmとなる組み合わせが作業しやすいことが明らかとなった。しかしながら、高齢者の着座及び車いす使用者の動作特性を考慮すると、座面の高さを40cm前後とし、作業台の高さを40cmあるいは50cmとなる組み合わせが望ましい。3.座位姿勢による作業しやすいレイズドベッドの作業しやすい高さと手が届く距離:健常高齢者を被験者とした実験を計画していたが、車いす使用者と健常高齢者の動作特性が異なることから、レイズドベッドを介護福祉施設及びリハビリ施設に設置し、車いす使用者を対象にしたユーザビリティテストを行うことにした。現在、観察実験中であり、次年度の課題でもある。
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