本課題では、接着剤に非化石資源由来の物質を用いて新規木質材料を創成することを目的としている。本年度はクエン酸とスクロースを溶解した水溶液を接着剤としてパーティクルボードを製造し、各種製造条件が物性に及ぼす影響を詳細に検討した。 【実験方法】 パーティクルは、リサイクルチップを篩にかけて一定サイズに分級したものを用いた。接着剤は、前年度の結果からクエン酸の他にスクロースの添加が有効と考え、クエン酸・スクロース水溶液とした。クエン酸とスクロースの割合を検討するため、重量比を100:0~0:100までの5水準を用意した。接着剤塗布量は5~40wt%、熱圧温度は140~240℃、目標密度0.4~1.0g/cm^3、マット含水率は2水準変化させた。熱圧時間については10分とした。比較としてpMDI接着剤(添加率8wt%)によるパーティクルボード(目標密度0.8g/cm^3)も作製した。得られたボードについて、3点曲げ強度試験、剥離強度試験、寸法安定性試験を行い、さらに良好な物性を示したボードについて、耐蟻性試験および耐朽性試験を行った。 【結果および考察】 クエン酸とスクロースの最適重量比を検討したところ、1:3が最も優れた物性を示すことが分かった。また、接着剤塗布量は20~30wt%、熱圧温度は200℃、目標密度は0.8g/cm^3が最適であり、マット含水率は10%以下に抑えることが有効であった。最適製造上条件で作製したボードは、pMDI接着剤で作成したボードと比較すると、曲げ強度は劣るものの、曲げヤング率、はく離強度、吸水厚さ膨張率は同等かそれ以上の値を示すことが分かった。また、耐蟻性や耐朽性は、pMDI接着剤で作成したボードと同程度の性能であることが認められた。以上の結果から、クエン酸とスクロースによる接着剤で優れたパーティクルボードを製造できることが認められ、木質材料の脱化石資源化の可能性を示すことができた。
|