本課題では接着剤に非化石資源の物質を用いて新規木質材料を創成することを目的としている。本年度はクエン酸を接着剤とした合板の作成を行い、製造条件が物性に及ぼす影響を検討した。 【実験方法】 単板は30×30×0.3cmのスギロータリー単板を用いた。接着剤はクエン酸を主剤とし、適宜、糖類やリグノセルロース粉末を添加した。クエン酸は60メッシュパスの粉末を用い、単板上に粉末塗布した。製造条件は、圧締圧力を1MPaとして、熱圧温度を180~240℃、熱圧時間を3~15分、塗布量を20~200g/cm3まで変化させた。得られた合板から引張せん断試験片を作成し、常態接着力を調べると共に、煮沸繰り返し試験による耐水性評価を行った。また、クエン酸と糖類との反応性についても検討した。 【結果および考察】 接着強度に及ぼす熱圧温度の影響を検討した結果、220℃までは常態強度や耐水強度の向上が認められ、それ以上の温度では220℃の場合と同等であることが分かった。そこで、熱圧温度を220℃として熱圧時間を変化させたところ、10分が最適熱圧時間であることを見出した。熱圧条件を220℃、10分、1MPaとしてクエン酸塗布量を変化させた結果では、60g/m2以上塗布しても著しい接着性の向上は認められなかった。したがって、本研究でのクエン酸粉末塗布による最適製造条件は塗布量60g/m^2で220℃、10分、1MPaであることが明らかとなった。次に、接着性能を向上させる試みとして、塗布量を60g/m^2一定としてクエン酸の代わりにスクロースやグルコースといった糖類の添加や、木粉や樹皮粉末の添加を行った。その結果、糖類の添加が常態接着強度の向上に幾分効果的であることを見出した。以上、今年度は合板製造に対するクエン酸接着の基礎的な知見が得られ、クエン酸を用いた木材接着技術に対して重要な結果が得られたと考える。
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