| 研究概要 |
木材や木質材料の破壊力学特性は,本来材料特性値であるため,試験方法や実験条件に影響されないことが望ましい。以上の観点から,本年度は以下2点について検討した。
(1)SENT試験およびCT試験で得られた木材および中密度繊維板(MDF)のモードIにおける応力拡大係数の評価
昨年度はSENB試験で得られた木材のモードIの応力拡大係数の評価を行い,き裂長さを補正することによって既往の研究結果がきわめて有効であることが示唆された。また,破壊力学の理論に基づき,短いき裂を持つ材料およびき裂を持たない材料の曲げ強さも予測できる可能性が示唆された。本年度はSENB試験の結果を踏まえ,木材のみならずMDFのSENT試験およびCT試験の実施および解析を行った。その結果,SENB試験同様,SENT試験とCT試験でもき裂長さの補正がきわめて有効であることが示唆された。以上のことに加え,SENT試験では試験体の負荷条件の影響が顕著であることがわかった。
(2)側面テーパ付試験体およびCIB型試験体の非対称4点曲げ試験による木材のモードIIにおける応力拡大係数の評価上述したように,昨年度は短いき裂を持つ木材のSENB試験を実施し,破壊力学の有効性を検討したが,この結果を踏まえ,本年度は側面にテーパを持つ試験体の中立軸に沿って短いき裂を導入して非対称4点曲げ試験を実施し,短いき裂を持つ木材のモードIIにおける破壊力学特性について検討した。さらに,CIB型試験体に比較的長いき裂を導入した試験体を非対称4点曲げ試験し,モードIIにおける応力拡大係数の評価を試みた。その結果,いずれの場合もモードIと同様にき裂長さの補正がきわめて有効であることが示唆された。
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