樹木の葉はバイオマス資源の中でも未利用の割合が特に高い。その有効活用のための化学分析を行う上で、樹葉中のリグニンの存在が常に問題となっている。一般的なクラーソン法を用いた樹葉のリグニン分析は過大な値を与えることが知られており、樹葉中のリグニンに関して厳密な検証を行った例はきわめて少ない。本研究では、リグニン固有のβ-アリルエーテル結合のみから分解生成物を得ることのできるDFRC法を用いて樹葉の分解処理を行い、樹葉リグニンの存在の確認、ならびにその分布と木部リグニンとの差異の検証を行うことで、葉の中に多種多様に存在するフェノール類の中で高分子リグニンが果たす役割を明らかにすることを目的とする。 研究初年度である21年度は試料にスギ葉を用い、DFRC法の適用の有効性と分析を行う上で重要である前処理についての検討を行った。スギ葉から木部と同様にリグニンのグアイアシル核由来の分解生成物が得られ、この手法での葉からのリグニン検出が行えることが判明した。分解生成物量を木部試料の値と比較した結果、スギ葉中のリグニン含量は約1%程度であると推定された。前処理に関しては、葉は木部とは異なる様々な夾雑物を含むが、分析前にまず熱ヘキサンで抽出して葉表面のワックス成分を除去し、ミルを用いた組織の粉砕の後にさらにエタノール・ベンゼン混液での抽出を行うことで低分子の抽出成分類を除去し、DFRC分析を行う上で問題のない試料を調製することができた。
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