研究課題
本研究は、魚類の成長に重要なインスリン様成長因子-1(IGF-I)、およびその生物活性を「促進」または「阻害」すると考えられる2つのIGF結合蛋白(IGFBP)の測定系を確立し、魚類の成長を正確に評価することを目指している。本年度は、IGF-I発現量と個体の成長率との関係を調べるとともに、組換えIGFBP-1の作製を行った。PITタグにより個体標識したサクラマス当歳魚を用い、絶食・再給餌実験を行った。実験魚を給餌群、絶食群および再給餌群の3群に分けて飼育した。経時的に肝臓サンプルを採取しリアルタイム定量PCR法によりIGF-Iの発現量を解析した。肝臓におけるIGF-Iの発現は4週間の絶食により減少した。個体の成長率との相関を調べたところ、給餌群において体重の増加率と正の相関があった。一方、絶食群や再給餌群では認められなかった。また、体長とはいずれの群でも相関が見られなかった。このことから、IGF-Iの発現はある程度は個体の成長率を反映するが、IGFBPといった他の指標との併用が望ましいと考えられた。しかし、本実験では当歳魚が標識によりストレスを受けていた可能性もあり、その影響を検討する必要がある。次に、サクラマスのIGFBP-1の組換え蛋白を、大腸菌を用いて発現させた。まず本種IGFBP-1のcDNAをクローニングし、その配列を元にpET-32aを用いた発現ベクターを構築した。それを大腸菌株Rosetta-gami^<TM>Bに形質転換させ、チオレドキシン・ヒスチジンタグ融合組換えIGFBP-1(Trx.His.IGFBP-1)を発現させた。Trx.His.IGFBP-1は電気泳動において予想される分子量に検出された。さらに、IGFBP-1に対する特異抗体に反応した。このことから、本蛋白の免疫測定系におけるスタンダードとして用いることができると考えられた。
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General and Comparative Endocrinology
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http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/3845/ms-topj.html