研究課題
本研究は、魚類の成長に重要なインスリン様成長因子-I(IGF-I)およびその生物活性を「促進」または「阻害」すると考えられるIGF結合蛋白(IGFBP)の測定系を確立し、魚類の成長を正確に評価することを目指している。本年度は、IGFBPおよびIGF-Iの蛋白測定系の確立を行い、成長との関係を解析した。まず、「阻害型」と考えられるIGFBP-1b(BP-1b)の時間分解蛍光免疫測定系(TR-FIA)の確立を試みた。すなわち、ヤギ抗ウサギIgGをコーティングした96穴プレートに抗BP-1b抗血清を添加した。続いてビオチン標識したBP-1bを精製品スタンダードと共に加えた。さらにユーロピウム(Eu)標識したアビジンを添加し、洗浄後、時間分解蛍光を測定した。結果、良好なスタンダードカーブを得ることができ、TR-FIAによる魚類BP-1bの定量が初めて可能となった。また、IGF-IのTR-FIAはEu標識したIGF-Iを用いることにより、サクラマス血清中のIGF-Iの測定が可能になった。「促進型」と考えられるBP-2bに関してはIGFによる干渉が考えられるため、BP-2bとIGF-Iの複合体に対して架橋とビオチン標識を同時に行い、現在その特性を解析中である。サクラマスを用い、絶食・再給餌実験を行った。まずサクラマス当歳魚をPITタグにて個体標識し、給餌群、絶食群および再給餌群の3群に分けて飼育した。経時的に血液を採取し、先に確立したIGFBPとIGF-IのTR-FIAにより解析した。血中IGF-I量は絶食により減少し、再給餌により回復した。一方、BP-1bは絶食により増加し、再給餌により減少するというIGF-Iとは逆の反応を見せた。さらに個体の成長率とも負の相関を見せたことから、サクラマスにおいてもBP-1bはIGF-I活性の「阻害型」であることが考えられた。
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