研究概要 |
本研究は超音波医療診断と同様の方法により,高周波超音波を用いて生鮮魚介類の体内を観察し,生態組織の音響的特性の差異を利用して,生体内部の異物の検出,寄生虫や魚病の発見,鮮度や品質の判定,魚卵や肝臓の識別など,食品として珍重される部位の大きさや成熟度を非破壊計測する方法を開発することを目的としている。前年度は既存の超音波診断装置を使用して生体内部の観察を行い,卵巣や肝臓の識別と組織のサイズ推定を行ったが,本年度は高周波超音波送受信機と音響プローブを機械走査して,広帯域の生体断層画像を作成する技術を開発した。3.5MHzと5MHzの基本波エコーによる超音波断層画像と2MHzの送波によると基本波エコー,および第2高調波(4MHz),第3高調波(6MHz)による高調波超音波画像を得ることができた。ある種の生体組織には非線形の性質があり,超音波反射波の波形が歪みその結果整数倍の高調波が現れると考えられる。本装置を用いて,スケトウダラ雌雄,スルメイカ雌雄個体の生体観察を行ったところ,精巣,卵巣,肝臓,胃などの部位が基本波よりも高調波においてより強調され,かつ2倍高調波が3倍高調波よりも鮮明に画像化されることが分かった。したがって基本波測定と高調波測定を組み合わせることにより,非破壊的方法により生鮮魚類の雌雄判別,成熟度判別,体内器官の検出が可能になると考えられた。ただし高調波エコーの振幅は基本波エコーに比べて小さく,超音波画像作成の課題として残された。
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