研究課題
本研究は、貝類増養殖事業を行っている海域を中心に、有用貝類の貝殻に穿孔する多毛類の種、生活史、生態に関する知見を得、人為的な増養殖を通して多毛類がどのように世界を移動しているかを捉え、人為的移動についてグローバルな視点で包括的に探ることを目的としている。今年度は、国内(大分、広島、島根、三重、東京湾等)と海外(オーストラリア、韓国等)の貝類(天然と増養殖)の貝殻を以下の要領で調べ、穿孔性多毛類の有無、侵蝕状況、穿孔種の同定、過去に報告されている種との比較等を行った。(1)貝類の貝殻をペンチ等で破砕し、穿孔している多毛類Polydoridsを摘出し、生体で観察後、10%中性ホルマリンで固定し実体顕微鏡、生物顕微鏡下で種を同定した。(2)体サイズ計測、生殖簿細胞の有無やサイズ計測、卵嚢の有無やサイズ計測、卵嚢の飼育と卵嚢内の発生の観察、幼若個体の観察を行い、多毛類の種の貝殻への定着期、産卵期、消滅期、発生様式、成長、寿命などの生活史、及び個体群動態を追跡した。その結果、今まで国内では生息が確認されていなかった種が確認され、新記録種として認識された。それらの種の生物・生態学的知見も得た。また、4月には、中国(大連)で開催された第1回国際マリンバイオテクノロジー学会に参加し、人為的養殖事業が及ぼす生態系への影響について発表・議論した。また、多数の多毛類研究者と情報交換を通し、本研究にフィードバックさせることができた。
2: おおむね順調に進展している
東日本大震災による研究の遅れがあったが、後半期は研究設備等を含めて落ち着きを取り戻し、従来の計画を遂行するように努めた。
震災による交通機関の障害、研究施設や設備の破壊等が重なり、海外での調査に一部滞りが生じた。次年度の計画に盛り込むことで解決する予定
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
Italian Journal of Zoology
巻: 78 ページ: 255-266
10.1080/11250003.2011.576037
食・農・村の復興支援プロジェクト報告書
巻: 1 ページ: 13-15
日本水産学会誌
巻: 77 ページ: 304-309
巻: 77 ページ: 1124-1124