養殖ホタテガイ・マガキには多くの付着生物が共存しており、これら付着生物の特徴を明らかにすることを今年度の大きな目的の柱に据えて研究を行った。現場から採集したホタテガイとマガキの表面には、ムラサキイガイ、ユウレイボヤ、フジツボなど付着しており、いずれも懸濁物食者であり、海水中の植物プランクトンを摂取していることが分かった。屋外の大型水槽の飼育実験では、とくにムラサキイガイのろ過量が著しく大きく、ホタテガイおよびマガキのろ過量より大きいことが分かった。海水中の植物プランクトンの多くは殻やロープに付着しているムラサキイガイによって摂取されてしまうことを意味している。ムラサキイガイは付着珪藻の摂取はほとんど認められず、ろ過食二枚貝類であっても、食物の摂取様式には違いがあることも明らかになった。 一方、付着生物の中でヨコエビ類やワレカラ類などの甲殻類は付着珪藻を摂食しており、殻の表面を活発に移動している様子がうかがえた。これらの付着生物を除去したものと除去しないものとで比較実験を行った結果、ホタテガイ、マガキともに、大きな違いは認められず、動物の影響を受けることなく、付着珪藻の摂取が行われている。 付着珪藻の生態については、多種多様な付着珪藻が共存していること、運動性がある種類が多く摂取されていることが明らかになった。
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