研究概要 |
近年、地域的な未利用水産資源として、洋上で投棄されていた小型底魚類が注目されている。特にアオメエソ属魚類(Chlorophthalmus spp.)は、メヒカリの名称で福島、静岡、三重、宮崎の各県で漁獲されて、地域的有用水産資源として経済的価値の高まった魚種である。そのため、メ、ヒカリの持続可能な資源管理の基礎となる、生態の解明に対する社会的要求は高い。本研究では、三年間にわたり、生活史に不明な点の多い小型底魚類のうち、メヒカリ、特にアオメエソ(Chlorophthalmus albatrossis)をモデル種として、生活史の解明に向けた研究を行って来た。初年度には日本産アオメエソ属魚類のα分類を整理した。平成22,23年度には、駿河湾内におけるメヒカリの生態解明に主眼を置き、定期的に戸田を基地としている底引き網漁船に乗船し、採集調査を実施した。駿河湾内のメヒカリ類と同所的に分布する底魚類の採集、分布水深、現場水温などのデータを収集した。アオメエソは駿河湾ほぼ全域の、大陸棚縁辺部から斜面にかけた、水深100-450m帯に生息していることが判明した。 アオメエソ属魚類仔稚魚の日本周辺海域への加入機構と成魚の分布様式を調査するために、学術研究船淡青丸による研究航海(KT-11-14、2011年7月4~8日)を実施した。現在、採集標本を解析中である。 岩手県立博物館、ふくしま海洋科学館と共同で、飼育下での発光観察実験を三度行い、マルアオメエソ(C.borealis)が発光魚であることを確認した。そして、世界で初めて、マルアオメエソの発光を映像記録として残すことに成功した。 メヒカリの餌生物に関する研究の一環として行った、マンジュウガニ属の幼生に関する研究が、2011年度日本甲殻類学会学会賞を受賞した。
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