本研究は、研究代表者らが視覚、聴覚、側線感覚の中枢神経回路をすでに明らかとしているキンギョを主な研究対象として、味覚と内臓感覚の神経路を解明することにより、真骨魚類の感覚中枢神経回路の全貌を明らかにすることを目標としている。その土台となるキンギョの脳アトラスの作成も目指している。今年度は間脳の三次味覚核を経由した味覚が大脳のどこに到達するのかを明らかとした。三次味覚核が間脳内で形成する神経回路についてもより詳細なデータを得たので、現在これらの成果を報告すべく論文を作成中である。内臓感覚系については、今年度は間脳から大脳にいたる経路の調査を継続していたが、こちらについてはまだ十分な研究成果を得ていない。一方、間脳の内臓感覚神経核から延髄に下行する経路の詳細を明らかにした。この経路は、内臓感覚(と味覚)に基づいて、咽頭で行なわれる餌の選別を調節する機能を持つと考えられる。この成果についてもデータをまとめて論文を投稿した。キンギョの研究と並行して進めているティラピアの内臓感覚中枢回路については、一次および二次神経核の神経回路に関する成果をまとめた論文が発表された。また、神経路の全貌を理解するために味覚と内臓感覚以外の感覚神経路についても従来よりも詳細な調査を行なっていた。それらのうち、キンギョの体性感覚(触覚など)の神経路についての論文が発表された。脳アトラス作成に必要な脳切片は、剥がれ、破損、汚損などが1枚もあってはならない。今年度、脳アトラスにおける使用に堪える完成度の高い連続切片が作成できた。
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