研究概要 |
昨年度後半(2009年11月)より開始したコタキナバル魚市場でのボウズガレイの未成魚・成魚の購入(3ないし4日に一度)を2010年10月まで継続し,魚体の形態ならびに計測形質の測定を行うとともに,生殖腺の発達状態について,ホルマリン固定された卵巣片を実態顕微鏡下で観察して卵細胞径を測定した。 体長35cm以上の個体は雌のみ,18~30cmには雄と雌が混在していた。雄では全個体で成熟した精子が確認された。すなわち,体長18~30cmであれば,季節に関係なく約半数は雄親魚として用いることが可能であることが判明した。一方雌では,卵径が異なる複数の卵細胞群が存在しており,複数回の産卵を行うことが示唆された。生殖腺指数(GSI)が2までは卵黄蓄積を完了するよりも前のステージであった。GSIが2から12までの個体のほとんどは,季節やGSIの値にかかわらず最大卵径は0.9mmであり,卵黄球が融合しつつある像が見られた.最大卵径が1.6mm程度の2個体(GSIは8.7と10.5)では,卵黄球の融合が完了した透明な卵が確認できた。これらの知見は,熱帯性の本種には産卵の季節性はなく,雌親魚としては,体長35cm以上の個体を養成しておき,適宜バイオプシーによって卵径を測定し,卵径が1.6mm程度に成長した時点で排卵促進ホルモンの投与により,人工授精が可能であると考えられた。 これらの市場調査による生殖腺の観察とともに,トロール漁船をチャーターした成熟親魚の採集ならびに小型桁網による着底稚魚の採集を数回試みた。成熟した雄はコタキナバル湾外の水深30m以深において採集されることを確認したが,稚魚の成育場については明らかにできなかった。
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