研究概要 |
海苔は毎年約100億枚生産されている。海苔の色落ちは天候やその他の要因で発生するが商品とはならずほとんどが廃棄されている。これを有効利用する目的で、海苔の細胞壁に多量に含まれる粘性のある酸性多糖であるポルフィランを効率的かつ短時間で調製すること及び精製したポルフィラン多糖の免疫細胞に与える影響を調べることを本研究の目的とした。 色落ち海苔を10%ブチレングリコール存在下100℃、15分加熱処理してポルフィラン多糖を抽出して、分子量50,000カットの中空糸膜を用いた限外ろ過で透析と濃縮した後、凍結乾燥した。免疫機能性は、マウスマクロファージ様細胞(J774.1培養細胞)あるいは2系統(体液性免疫の強いBALB/cと細胞性免疫が強いC57BL/6)のマウス脾臓細胞を用いて、ポルフィラン多糖による細胞性免疫の賦活化に関与するインターロイキン(IL)-12とインターフェロン(IFN)-γの産生誘導を酵素免疫測定法で定量した。 ポルフィラン多糖の収量は乾燥海苔重量当たり17.5%で、効率的かつ短時間な精製方法で十分純度の高い多糖が調製できた。J774.1細胞において、ポルフィランは25~100μg/mlの範囲で濃度依存的にIL-12の産生を誘導した。両系統のマウス脾臓細胞用いた実験系では、ポルフィラン刺激によるIL-12産生増強はなかったが、IFN-γの産生増強が認められた。したがって、ポルフィランには自然免疫を賦活化して細胞性免疫を増強する作用があり、体液性免疫(ヘルパーT細胞2型)に偏った体質を細胞性免疫(ヘルパーT細胞1型)を賦活化させることで免疫バランスを改善させ、アレルギー反応を抑制する乳酸菌と同様な健康機能効果があると考えられた。
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