研究概要 |
研究分担者の山崎が所属する瀬戸内海区水産研究所百島実験施設近海において,3~10cmサイズの天然トラフグ稚魚を採捕した。これらの標本について,灌流固定の後に免疫組織化学的手法を用いてフグ毒(TTX)の分布を精査したところ,TTXが皮膚,肝臓の他,脳,視神経,嗅上皮に分布することを確認した。 この天然稚魚と同サイズの無毒人工種苗に対して筋肉注射(10MU)と経口投与によるTTX添加(7-28MU/g feed)を行い10日間飼育し,経時的にサンプリングを行いTTXの分布を調べた。その結果,いずれの投与法でもTTXは速やかに蓄積され,天然魚と同様の組織内分布を示した。 天然稚魚と無毒人工種苗,TTX筋肉注射投与人工種苗について,新規環境に曝した後の稚魚の情動行動を行動学的に定量評価したところ,TTX投与種苗は天然魚に近い行動特性を示すことが明らかになった。 これらの結果を受け,平成22年度は嗅覚がTTXセンシングの中核器官であり,TTXの蓄積がトラフグ稚魚の行動に影響を与えるという仮説を立てることができた。
|