研究課題
本年度はフグ毒投与によるトラフグ稚魚の情動行動の経時変化の詳細な解析とともに、フグ毒の中枢神経内の動態の経時変化を明らかにすることを目的とした実験・調査を実施した。フグ毒を筋肉注射および経口投与によって飼育し、その後のトラフグ稚魚の行動を比較した。フグ毒筋肉注射後24時間を経過した稚魚は、対照の稚魚に比べて新規環境に対する行動が異なった。すなわち、フグ毒注射稚魚は、対照よりも攻撃行動が少なく、底層を遊泳する行動が顕著になった。フグ毒を経口投与した場合、少なくとも6日目以降に同様の傾向が見られた。フグ毒モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学試験の結果、いずれの投与法においてもフグ毒投与後24時間以内に速やかに中枢神経にフグ毒が移行し、特に、行動を司る小脳や感覚器官の中枢である延髄に強い陽性反応が得られた。これらの結果から、フグ毒投与後のフグ毒はトラフグ中枢神経のうち、感覚・行動を司る部位に働きかけ、その結果として情動行動を抑制する働きがあると考えられた。さらに,天然水域を模したメソコスムに放流した無毒のトラフグ人工種苗の経時的な毒化過程を同様の手法で調べたところ、放流後少なくとも6日目には中枢神経および上皮基底細胞・肝臓へのフグ毒蓄積を確認することが出来、情動行動も抑制傾向が見られた。すなわち、天然水域と実験環境の結果の整合性がとれており、フグ毒はトラフグ稚魚の中枢神経に作用し、行動をコントロールするニューロトランスミッターを修飾する分子として位置づけられると考えた。
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日本水産学会誌
巻: 78 ページ: 93
Toxicon
巻: 58 ページ: 565-569