1) 新興感染症としての新型レンサ球菌の大規模疫学調査として、研究室保存の日本株、中国、シンガポール、マレーシア、台湾株との比較を行うことは、魚類防疫上重要事項である。特に、日本のカンパチ養殖では、種苗の大半は海外種苗である。これら細菌感染症の疫学調査・研究を行い、将来の防疫体制の細菌感染症のアジアでの移動が明らかにした。 2) この新型レンサ球菌は増殖適温が37℃であり、養殖現場においては高水温になれば病勢が強くなる。水温の上昇により感染力が強くなるかを明らかにした。どの水温帯になれば、感染が成立するのかを把握することで、養殖現場に危険予報を出すことが可能となり、予防・治療に貢献できるようになった。 3) 魚類由来細菌は、われわれの研究より、畜産動物由来の菌株とはいくつかのハウスキーピング遺伝子および23srRNAの塩基配列に違いがみとめられることが明らかになり、これら遺伝子群の違いをもとに、魚類由来菌株の分類学的位置を明確にすることができた。この結果をもとに魚類由来の菌株と哺乳動物由来菌株の迅速判定を、PCR法を用いて行えるようになった。 4) また、魚類の感染を早期に診断および病原体を分離できる方法を開発した。この方法を基に養殖場レベルでの迅速診断法をも開発した。 5) 安全な食品を供給できるようにすることを目的として将来の予防(ワクチン開発)法確立のための基礎研究として、魚類分離細菌の抗原性が単一なのか複数存在するのか調査して、日本の菌株は、抗原性は均一であることを明らかにした。
|