タイ国カセサート大学水産学部アニュコーン准教授と共同で、カニかご漁具への入りかご数と死亡数に関する潜水観察実験を行い、かご漁具の場合、入りかご数が最大値に達するまでに無視できない日数を要するため、かご漁具によるゴーストフィッシング機能の経時的変化に関するモデルが、従来提唱してきたサバイバル関数fg(t)=a・(1-b)tでは近似できないことを見出した。すなわち、入りかご数が指数関数的に増加することから、入りかごの増加とそのうちの死亡率の低下の両者を取り入れた新たなモデルとして、fg(t)=a(1-ct)・(1 - b)tを得た。この結果、カゴによるゴーストフィッシングが漁具逸失後約50日後に最大となる観察データによく一致するシミュレーション結果を得た。このことにより、ゴーストフィッシング死亡数推定のモデルをほぼ確立できている刺し網に加えて、かご漁具でもこれが達成された。両漁具は、ゴーストフィッシングが確認できている代表的な漁具であり、2つの漁具のゴーストフィッシング死亡数推定モデルが確立できたことで、漁業全体でのゴーストフィッシング死亡数推定精度を格段に向上させることができるようになった。 南九州の3漁村で、漁業者を対象に、ゴーストフィッシングの発生が確認されている刺し網、三枚網、かご漁業者の、使用漁具数、逸失漁具数等の聞き取り調査を行った。その結果、年間逸失率は、底刺し網・三枚網では0.08~0.17、かご漁具では0.12~0.23という値を得た。漁具の年間逸失率は、漁業全体での逸失漁具数の推定に極めて重要であるが、これまでの研究で得ている、日本海ベニズワイガニかご漁具での0.20とはほぼ一致するものの、フィリピン、タンザニアで得ているほぼ0、トリニダードトバゴで得ている1.0以上と比べてばらつきが大きく、その要因を検討する必要がある。
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