ナマコの市場価値を左右する疣足形状の遺伝性について検討することを目的として本研究を行った。交付申請書に記載の通り、20年度に予め作出しておいた幼ナマコ集団(子集団)、すなわち疣足形状の異なる3産地野生集団(青森県産、岩手県産、および北海道産)のマナマコを親集団として、各産地内でのランダム交配により得られた幼ナマコの疣足数、疣足長、および体重を測定した。これまでの申請者らの研究により、ナマコの疣足数・長は、個体サイズの増大に伴って増加することが判明している。そのため、これらの形質は個体サイズとの関係を考慮して評価する必要がある。本研究では、測定された体重(x軸)に対する疣足数・長(y軸)の相関関係を表すグラフ上の近似曲線の高さを各産地および親子間で比較した。その結果、体重に対する疣足数は親集団における結果、すなわち北海道、岩手、青森県産の順に多くなる傾向に対して、子集団においても同様に北海道、岩手、青森の順に多くなった。これらの結果は統計学的に有意なものであった。ほぼ同一の条件下で飼育されていた各子集団において、各産地親集団と同様の傾向を示したことは、体重に対する疣足数が遺伝形質であることを強く示唆するものである。疣足長については、各産地・親子間で明確な関連性は見出せなかった。以上の結果に基づき、疣足形状の遺伝性を個体レベルでの親子関係において検討するため、マイクロサテライトDNA(MS)分析を試みた。その結果、上述した親子集団の近似曲線を基準として、各個体のプロットのy軸方向の距離を親子で比較するためには、少なくとも4MS座以上を分析する必要性が示唆され、今後に資する基礎知見が得られた。
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