研究概要 |
[目的]昨年度の研究で、RDV法やゲノムウオーキングによってウナギのウイルス性血管内皮壊死症の原因ウイルスゲノムを5,300bp塩基配列まで決定した。本年度は、次世代シークエンサーやOverlapping PCR及びサザーンブロット法よって本ウイルスの全塩基配列を明らかにし、遺伝子構造解析を行うことを主な目的とした。 [方法]JEE細胞に本ウイルスを4日間培養した後、その培養上清30mLからDNAを抽出した。このDNA試料から次世代シークエンサーを用いて本ウイルスの全塩基配列を決定した。得られた塩基配列やOverlapping PCR及びサザーンブロット法によってDNA構造を解析した。Blast検索して既知のウイルスとの相同性を比較した。また、ウイルス検出用ための4種類のPCRプライマーを設計し、感染細胞、自然感染魚、実験感染魚から抽出したDNAをTemplate DNAとしてこれらのプライマーとAmphilTaqGold(ABI)を用いてアニーリング温度55℃、サイクル数70回でPCRを行った。 [結果]次世代シークエンサーよって本ウイルス(JEECV)の全塩基配列15.131bpを決定した。JEECVは2本鎖の環状DNAウイルスであった。この中には、15のORFが存在していた。全塩基配列をアミノ酸配列に翻訳してBlast検索すると、PolyomavirusのLargelT-antigen領域の一部に相同性が認められた。しかし、JEECVのこの領域をPolyQmavirus群とneighbor-joining methodによって得られた分子系統樹を作成して比較した結果、JEECVは新しいウイルス科に属することを示した。JEECVのPolyomavirusのLarge T-antigen-like領域から2カ所(プライマーA,024)、他の領域から2カ所(プライマーB,C)計4カ所から作成したPCRプライマーによってJEECVの検出を行った結果、プライマーA(270bpを増幅)の特異性や検出感度が高かった。また、自然感染魚では鰓組織からの検出率が高いことから、PCRによる本症の診断には鯉組織が適していると思われる。また、Taq polymaraseとしてGo Taq(Promega)、アニーリング温度55℃、サイクル数30~40回によるPCRでも同様の結果が得られている
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