研究概要 |
昨年度までの研究により、ウナギのウイルス性血管内皮壊死症の原因ウイルスのゲノムの全塩基配列を解読し、その塩基数は15,131bpで2本鎖の環状DNAウイルスであることを明らかにした。ゲノム中には15のORFが存在していた5全塩基配列を基にしたアミノ酸配列によるBlast検索によりPolyomavirusのLargeT-antigen領域の一部に相同性が認められるものの、既知のウイルスとは異なる新しいウイルス科に属することを明らかにした。さらに、この領域から作成した270bpを増幅するPCRプライマー(Primer A)を作成し、PCRによる本ウイルス(JEECV)の検出法を示した。そこで本年度は、養殖場のウナギからのJEECVの保有状況を調べるために静岡県浜松市内の養鰻場から4月~12月までの期間、月2回各5尾の鰓および肝臓からJEECV検出を行った。また、本症の予防対策としてのワクチンの有効性について検討した。 静岡県浜松市内で、例年本症の被害の多い養鰻場(A養殖場)と本症の発生が希な養鰻場(B養殖場)の未発症魚からのJEECV検出率はそれぞれ平均50.0%および35.0%となり、養殖場で飼育されているウナギは高い割合でJEECVを保有していた。しかし、検査したいずれの個体のPCRで検出されたDNAバンドの濃さは病魚のそれと比較すると非常に薄いバンドがほとんどであり、本症を発症するウイルス量には達していなかった。A,B養殖場のいずれも本症が発生した時期には、JEECVの検出率は66.7~50%に上昇したことから本症の発生の予測の可能性が示唆された。また、臓器別に見ると鰓からのからのJEECV検出率が平均70.0~64.7%を示した。JEECVのホルマリン不活化ワクチンの有効性に関しては、ワクチン接種後28日目と56日目にJEECVの腹腔内接種による攻撃試験によりその有効性を調べた。その結果、ワクチン接種後28日目では死亡率は14%、一方対照区では66.0%に達し、ワクチンの有効率(RPS)は89.9%となった。ワクチン接種後56日目でもRPSは66.0%を示した。さらに、ワクチン接種後28日目にワクチンを再接種して56日経過した実験魚でも、そのRPSは72.2%を維持していた。ワクチン接種魚の血中抗体価は28日目で16であった。これらの結果から、本症の予防対策に対してワクチンが有効であることが示唆された。
|