研究課題
【目的】エリスロポエチン(EPO)は、哺乳類では赤血球系の前駆細胞に作用し、増殖や分化を誘導する造血因子として知られる。魚類ではゼブラフィッシュの腎臓造血細胞をリコンビナントEPO存在下で培養することで、赤血球系細胞が増殖することが報告された。しかし、赤血球前駆細胞の分布・動態および増殖能・分化能は解明されていない。本研究では魚類造血細胞の増殖・分化機構の解明を目指し、コイEPOのバイオアッセイ系を確立するとともに、赤血球前駆細胞の増殖能・分化能を調べた。【方法】コイEPOのcDNAを発現ベクターpET-16bに連結し、大腸菌BL21(DE3)pLysS株へ形質転換後、リコンビナントタンパク質ccEPOをNiアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。EPOの生理活性は、演者らが確立しているコイ腎臓造血細胞の支持細胞上における培養法および軟寒天コロニーアッセイ法により調べた。【結果】ccEPOを100ng/ml以上添加した支持細胞上における培養で増殖した細胞の中には、ヘモグロビンを染める・-dianizidine染色に陽性の細胞が観察された。また、赤血球系マーカー遺伝子の発現を調べた結果、・-globin, eporおよびgata1の発現が認められた。一方、ccEPOが10ng/ml以下の培養で増殖した細胞では赤血球マーカー遺伝子の発現は認められなかった。軟寒天コロニーアッセイにおいて、ccEPOを100ng/ml以上添加した条件下ではコイ腎臓造血細胞は赤血球系マーカー遺伝子を発現した大小のコロニーを形成した。一方、ccEPOが10ng/ml以下の条件下では、赤血球系遺伝子を発現したコロニーは観察されなかった。以上より、EPOは赤血球前駆細胞に作用し、その増殖を誘導することが示された。現在、コイ赤血球前駆細胞の分布・動態の解明を目指し各組織由来細胞のコロニーアッセイを行っている。
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