研究概要 |
最終年度にあたる平球23年度は,開発した「サンゴの蛍光蛋白質モニタリング装置」によって得られた蛍光画像の輝度データ(以下,輝度と記す)と環境データとの応答に関する解析を中心に実施した。 1.サンゴ蛍光画像における輝度の変化と環境変動との応答 経時的に得られた蛍光画像中のボリプ部分(40×40pixel)の平均輝度をサンゴの状態を表す指標と仮定し,輝度の時系列データを作成した。このデータと環境データとを比較し次の結果を得た。 (1)輝度と照度に応答はない (2)水温上昇に伴い輝度が上昇 (3)流速が速くなると輝度が低下 これらの結果は,サンゴの変化と環境変動とを実海域で同時に捉えることが出来た画期的な結果であり,本装置がサンゴ礁海域のモニタリングツールとして有効であることを示唆する結果であった。(MTS Journalに投稿中) 2.通常画像から得られたサンゴの食害 2011年3月の蛍光撮影調査で得られた画像から,巻貝によるサンゴの食害過程(対象サンゴの一部分が白色に変化していく様子)を経時的に観察することが出来た。夜間に小型の巻貝(シロレイシガイダマシ類Drupella spp.)が出現しサンゴを食んでいた。食害部分の蛍光撮影は励起光が届いていなかったため解析ができなかったが,実海域におけるサンゴが時々刻々変化する様子が観察できたことは非常に重要で,本装置の有効性を示すことができた。(みどりいし,サンゴ礁学会で公表) 3.蛍光撮影技術の深海調査への応用 本研究で開発した装置のフィルターセットおよび撮影手法を用いて,実験室および調査船上において深海生物の蛍光撮影を行ったところ,多くの深海生物が蛍光を発することが分かった。深海生物の蛍光が何を意味するのかは今後の重要な課題であるが,深海調査時の深海生物モニタリングの技術として有効であることが示唆された。(JPGUMEETING 2012で公表)
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