研究概要 |
宮城県の漁業統計データを1952年まで原本に戻って確認し,漁獲量や努力量を年代横断的に比較できるよう,魚種,漁業種類,経営規模の区分を階層的に整備した。データのまとめ方はモデル構造に直結するため,データ整備と生態系モデルのチューニングを並行して慎重に進めている。日本哺乳類学会て自由集会を主催し,データの収集と解析に関する知見を交換した。 胃内容物の出現有無のロジスティックGLM解析から,キタオットセイが一部餌生物に対して成長段階差を示すことを確認した。この成果はキタオットセイの資源分配を理解する上でも重要な知見であり,日本哺乳類学会2010年大会で発表した。また,カイ2乗法による複数種胃内容物の出現解析は,データの独立性などの問題を含むことを確認し,多項分布モデルを用いた改良法を開発した。さらに,多項分布モデルが予測するゼロの頻度と,観測された空胃頻度の乖離が,採食環境に関する情報を提示する可能性が示唆された。 キタオットセイの食物選好性について,過去の飼育実験結果を定量的に解析し直した結果,選好性は餌サイズやエネルギー含量と関係することを確認した(Italian Journal of Zoologvに投稿中)。また,キタオットセイの糞に基づく餌サイズ推定法を検証し,飼育下では耳石の消化が起こりやすく,餌サイズを過大評価する可能性があることを確認した(Mammal Studyに投稿中)。 キタオットセイの長期保管組織標本から栄養段階の変遷を調べた結果,魚種交代におけるマイワシの卓越に応じて窒素同位体比が約1.5‰低下し,生態系の食物連鎖長短縮が起こった可能性が示唆された(国際シンポジウムで発表)。
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