研究概要 |
【内容】 魚卵アレルギーは日本の食習慣と密接に関わる食物アレルギーである。我々はこれまで,イクラ(シロザケ卵)の主要アレルゲン,β'-component(β'-c)について,その一次構造決定とヒトIgE結合部位(エピトープ)の解析をおこない,また,魚卵間のアレルゲン交差性と共通アレルゲンの同定を進めてきた。平成22年度は,β'-cの限定消化と合成ペプチドを用いた実質的なエピトープの絞り込みを実施した。また,魚卵間のアレルゲン交差性情報を充実させるため,イクラとカラスミ(ボラ卵)およびタラコ(スケトウダラ卵)間の交差アレルゲンを検討した。 【結果】 (1)シロザケβ'-cの消化ペプチド群から,イクラアレルギー患者の血中IgEと反応する4種類のペプチド(YPVNMPLSCYQVLAQDCTIELK,DHASEQNHINVK,GEGVSLYAK,およびVVDWMK)を得た。これらのN末端とC末端の欠損程度を変化させた合成ペプチドを用いてIgE反応性の有無を比較したところ,IgE結合部位を含む5カ所の配列(LSCYQV,LAQDCTIEL,DHASEQNHIN,GVSLY,およびVVDWMK)を明らかにできた。(2)シロザケとスケトウダラのβ'-c間に共通するエピトープを,2カ所見いだした。これはアレルゲン交差性成立に関与するエピトープの存在を初めて示した知見である。(3)生鮮ボラ卵の卵黄タンパク質中に,イクラアレルギー患者の血中IgEと反応する6種類のβ'-cアイソフォームを見出した。そして,ボラβ'-cとシロザケβ'-c間に抗原交差性が存在する事を阻害ELISAによって確認した。(4)今年度明らかにしたシロザケβ'-c中のIgE結合部位と酷似する3配列を,データベース上のボラ卵黄タンパク質(ビテロジェニン)中に見出した。
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