海洋天然物ラメラリンをモデルとして、そのトポイソメラーゼI阻害作用の分子作用機構に基づき、ラメラリンの中心ピロール環の窒素原子の位置を変換した二種類のトポイソメラーゼI阻害活性候補分子(イソラメラリン及びビスラクトン)をデザインし、これら化合物の合成と活性評価を行うことが研究目的である。本年度はイソラメラリンの合成ルートの確立を重点的に検討した。 イソラメラリンは、TosMICを用いたピロール環形成反応、分子内Heck反応及びSuzuki-Miyaura交差カップリング反応を基軸とする合成計画を立てた。平成21年度は、ベンジルイソバニリンから始め、芳香環2位の臭素化、4-プロモクロトン酸メチルとのReformat sky反応、トシルメチルイソシアニド(TosMIC)アニオンとの[3+2]双極子付加反応によりるピロール環の構築及び分子内Heck反応等による2-プロモ-7-イソプロポキシ-8-メトキジヒドロシベンゾ[g]インドール-3-カルボン酸エステルまでの変換を達成した。本年度は、このものと4-イソプロポキシ-2-メトキシメトキシフェニルボロン酸とのSuzuki-Miyaura交差カップリング反応、ラクトン化、及び脱保護により、イソラメラリン(IL-1)の合成に成功した。また、本化合物は、ヒト子宮癌由来HeLa細胞に対して、親化合物であるラメラリンDや臨床抗ガン剤カンプトテシン以上(約2倍程度)の高い増殖阻害活性を示すことが明らかになった。また、トポイソメラーゼI阻害活性試験に於いては、本化合物はラメラリンDと同様に強く本酵素作用を阻害することが明らかになった。今後は、in vitroでの動物実験に耐えうるような、水溶性基を導入した誘導体の合成を行う予定である。
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