研究概要 |
1.エビ・カニなどの結晶性αキチンの甲羅を持つ生物を餌とする魚種よりイサキを選び、その胃より粗酵素液を調製し、硫安分画、アフィニティーおよびイオン交換カラムクロマトグラフィーを用いてキチナーゼを精製した。精製酵素はSDS-PAGEにおいて単一バンドを示し、分子質量は49kDaであった。本酵素はキチンの非還元末端より2分子のGlcNAcを良く遊離する酵素と考えられた。N-末端アミノ酸配列はすでに報告したシログチ42kDaキチナーゼのそれと22残基まで一致した。pNp-GlcNAcn(n=2,3)に対する最適pHはいずれもpH3.5の酸性域に認められ、胃酸の存在する胃内酸性pHと良く符号した。また、反応時間10分間では70℃の比較的高温に最適温度が認められた。 2.北欧のタコには唾液腺にキチナーゼが存在することが報告されていることより、日本産マダコを用いてキチナーゼの有無を検討したところ、キチナーゼ活性が観察された。そこで、キチンアフィニティーカラムに対する吸着の有無を調べたところ、吸着が認められた。吸着タンパク質の分子質量をSDS-PAGEで分析したところ、50-70kDa付近に複数のバンドが検出された。現在、キチナーゼの精製を進行中。 3.イサキ胃よりTotal RNAを抽出し、逆転写酵素を用いてmRNAよりcDNAのテンプレートを合成した。イサキのN-末端アミノ酸配列および脊椎動物ファミリー18キチナーゼの保存配列より縮重プライマーを設計し、PCRにて350bpのDNAフラグメントを増幅させた。この塩基配列を解析したところ、既報の脊椎動物キチナーゼと高い相同性が認められた。そこで得られた部分配列より上流および下流域のプライマーを設計し、5'および3'RACE法により上流および下流域を増幅させた。現在、全長配列を解析中。また、すでに全長配列解析終了したマサバ胃キチナーゼのcDNAを試料とし、大腸菌を用いた発現系を構築中。
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