研究概要 |
食の安全に対する消費者の総合的信頼水準が、食品事故に関する記憶、特定の食品に関するリスク認知、食品健康危害に関する懸念、フードチェーン各段階の事業者や政府への信頼、消費者の社会人口学的・パーソナリティ的特性などの要因によってどの程度説明されるのか、そして、各説明要因の相対的影響力はどの程度なのかを、Webアンケート調査により収集した回答データに因子分析ならびに共分散構造分析を適用して実証的に分析した。分析の結果,次の知見が得られた。 1.食の安全に対する消費者の総合的信頼は,欧米消費者の既往実証結果と同様に,食の安全の楽観視と悲観視という2次元で捉えられ,両者の誤差項間には統計的に有意な負の相関が認められる。 2.消費者による各食品群の安全性評価は,欧米消費者の既往実証結果と同様に,生鮮食品の安全信頼,加工食品の安全信頼,食の生産方式への関心,食品の健康感への関心の4つの潜在因子によって説明され,生鮮食品や加工食品の安全信頼が高いほど,食の生産方式への関心が低いほど,食の安全の楽観視が強まる。一方,加工食品の安全信頼が高いほど,食の生産方式や食品の健康感への関心が高いほど,食の安全の悲観視が強まる。 3.一般的信頼傾向が強い回答者ほど,フードチェーン各段階の事業者や政府への信頼が高い。政府への信頼が高いと食の安全の楽観視が強まる一方,小売業者への信頼が低下すると,食の安全の悲観視が強まる。 4.回答者のパーソナリティ的特性である心配的傾向は,食の安全の悲観視強めるが,食の安全の楽観視には影響しない。 今後、食品事故に関する回答者の記憶の内容について詳細に検討した上で,次年度以降の定点調査回答データの比較分析のベースとなる食の安全に対する総合的信頼測定モデルを同定することにしたい。
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