研究概要 |
食の安全に関する第3回目の消費者定点Web調査を,福島第一原子力発電所事故後の2011年9月に実施し,当該回答データを昨年度に2回実施した消費者定点Web調査回答データと比較検討して,原発事故に伴う食品放射能汚染問題の発生後によって,食の安全に対する消費者の総合的信頼水準を構成する次元が変わったかどうか,また,各次元を構成する因子の水準がどのようなものかについて分析を行った。分析の結果,食の安全に対する消費者の総合的信頼は,食品の放射能汚染問題発生前と同様に,食の安全の楽観視と悲観視という2次元で捉えられ,それらの水準は,食品の放射能汚染問題発生の前後で有意に変化していない。したがって,原発事故に伴う食品の放射能汚染問題発生後も,全体的には消費者の食に対する総合的信頼に変化は生じていない。 食品の放射能汚染問題については,放射性物質検査済みの福島県産牛肉の購入意向に消費者のどのような特性と知識・態度が影響を与えているか順序プロビット分析によって分析した。分析の結果,次のような知見が得られた。 女性は男性に比べ,「放射性物質不検出でも福島県産牛肉を買わない」,「不検出なら買う」確率が高く,「検査済みなら買う」確率が低い。未就学児がいる回答者は,「不検出でも買わない」,「不検出なら買う」確率が高く,「未検査でも買う」確率が低い。食品の放射能汚染情報に対する信頼が高い回答者ほど,「不検出でも買わない」,「不検出なら買う」確率が高く,「検査済みなら買う」確率が低い。政府と生産者の対応に関する信頼が高い回答者ほど,「不検出でも買わない」,「不検出なら買う」確率が低く,「検査済みなら買う」確率が高い。
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