今年度は、簿記記帳を学習する農家グループについて、近隣であり周辺市町村の中では活発さで知られながらも、活動方針の対照的な北海道の2市町のグループを調査した。また、沖縄で山羊を活用して地域振興を図る活動に取り組む諸組織について、組織形態の特徴について調査した。 対照的な農業簿記の学習グループの調査からは、活動目標の設定の違いが、学習内容の違いに、そして活動のスタイルの違いとなって現れていることが、明らかとなった。つまり、どちらのグループも農民運動の農政活動を背景として始まったものであるが、一方は農政活動での要求に説得力を持たせるために重要となる裏付けデータの整理を方針としており、故にデータの公開と共有は必然となっていた。もう一方のグループでは、農政活動に限界を見て自分の経営は自分で何とかするためにデータを活用することを方針としており、記帳や分析の方法については情報交換するが、データそのものの公開には抵抗が大きい。 沖縄で山羊振興に関わる組織の中でも、今回は食文化について取り組んでいる活動グループを中心に調査した。食文化をテーマとしているが故に、様々な分野の組織や個人の参加が必要であり、組織形態としてはネットワーク型となることが必然であった。そうした組織形態からは、創発的に活発な活動が生み出される反面、活動全体の把握や整合性に困難が大きいことも明らかとなった。
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