生産者を対象としたアンケート調査により、栽培履歴の記帳実態と経営管理に関する考え方との関連性について分析を行った。その結果、単に義務として記帳するのではなく、技術改善に活用すべきと考える生産者が多数を占めていた。また、以前から詳細な内容で作業日誌を記録していた生産者ほど、栽培履歴の記帳にも真摯に取り組んでいることが明らかとなった。つまり、データの集積とその活用は相互励起的な関係にあり、継続的な学習の蓄積が行われていることが示されている。さらに、そのような生産者ほど、販売対応に関しても単に価格にこだわるのではなく、消費者との接近や長期的な取引など戦略的な対応を求めていることが明らかとなった。しかしながら実際に見られたのは、GAPを全県的に導入している栃木県においても記帳の徹底が課題となっていて、そのために項目の簡素化が行われていることであった。こうしたギャップがなぜ生じるのか、そこに組織行動の本質的な問題があることをうかがうことができた。 まだ、栽培履歴やGAPの記帳データを組織的に活用している事例は見られない。しかし、生産者の意向からすると、栽培履歴やGAPのデータを活用する可能性は大きいと考えられる。生産者が個人的に記録しているデータを持ち寄って分析検討し、成果を上げているグループもあることを考えれば、記帳内容を検討することによって可能性は大きく開けるものと考えられる。前年度までに調査した簿記データを活用するグループが成果を上げている事例から考えると、経営成果として目指すべき目標を明確にし、それを組織として共有することが、まず重要であるといえる。
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