総力戦として戦われた日中戦争・アジア太平洋戦争においては、数多くの「帝国臣民」が動員された。その対象は、日本「内地」に限らず「外地」(朝鮮・台湾・「満洲」)の領域全体に広がった。そして戦後には、帝国日本の解体にともなって、「国境」を越えて動員された人々がそれぞれの出身地域に引揚げすることとなる。戦時期から50年代東アジアの歴史分析において、帝国日本内における「帝国臣民」の動員と引揚げという現象を無視することはできない。農業・農村史分析も、その例外ではない。本研究では、帝国レベルでのマクロな状況をふまえつつ、植民地朝鮮農業・農村の変化を析出することを試みた。具体的には、植民地朝鮮農村における人口移動の背景となる農民層分解に関連して、朝鮮総督府の農業・農村政策のなかでもとくに農村金融政策と林野政策に着目して、その特徴と朝鮮農村に及ぼした影響を分析した。
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