本研究では比較的水資源が豊富ではあるが、経済発展の進んでいないカンボジアやラオスを含むメコン河流域諸国に焦点を合わせ、穀物価格の高騰と当該地域に於ける食糧増産と輸出の可能性、食糧増産を挺子とした農家所得の向上と貧困削減について、数量経済学的手法を用いて分析することを目的とする。課題は、(1)穀物の国際価格変動を説明するモデルを構築し価格変動の要因分解を行い、将来の穀物価格の動向を予測すること、(2)水資源制約を表すモジュールを組み込んだ経済モデルを構築し、食糧増産の可能性について考察すること、(3)食糧増産により農家所得がどれほど増加するか、また、貧困削減はどの程度かを国民経済の観点から評価することである。 平成21年度は、簡単な穀物貿易モデルを構築し、国際価格の変動要因の分析を行い、人口規模の大きな途上国の経済成長のインパクトが穀物市場に及ぼすインパクトを評価し、メコン河流域諸国での穀物生産性向上が国際価格の上昇を抑制する可能性を評価した。穀物生産性を向上させるためには水資源が重要であるため、水資源モデルを構築するためのデータベースの整備を行った。また、ラオスの灌漑地区において収穫期における稲の刈り取り調査を行い、放射スペクトルから得られる植生指標NDVIと収穫量の関係を分析した。この分析結果により、衛星画像による収量分布の広域展開が可能となるため、水資源と収量との関係を分析するための重要なデータとなる。また、一般均衡モデルを構築するのに必要な産業連関表を推計するために農家調査(生産費調査}を行う予定であったが、現地でのサンプリングがうまく行かなかったためサンプリング計画を変更し、平成22年度に改めて農家調査を実施し、産業連関表の再推計を行った。
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