研究課題/領域番号 |
21580264
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 勝宏 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (80225698)
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研究分担者 |
吉田 貢士 茨城大学, 農学部, 准教授 (20420226)
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キーワード | メコン河流域諸国 / 経済発展 / 水資源・流量 / 水質汚濁 / 食糧増産 / 穀物価格変動 / 社会会計表 / 応用一般均衡分析 |
研究概要 |
本研究では比較的水資源が豊富ではあるが、経済発展の進んでいないカンボジアやラオスを含むメコン河流域諸国に焦点を合わせ、食糧増産と輸出の可能性、食糧増産を挺子とした経済成長と貧困削減について、数量経済学的手法を用いて分析することを目的とする。具体的な課題は以下の3点である。即ち、(1)穀物の国際価格変動を説明するモデルを構築し価格変動の要因分解を行うこと、(2)水資源モデルを構築することでメコン河流域諸国の水資源量及び水質の分析を行うこと、(3)食料増産により農家所得がどれほど増加するかを経済モデルにより評価することである。 課題(1)については、部分均衡モデルと一般均衡により穀物単収変動のシミュレーション分析を比較検討した結果、部分均衡モデルでは単収変動のインパクトが比較的大きいが、一般均衡モデルを用いるとそれほど大きな影響が出ないことを明らかにした。採用したパラメーターの値にも依存するが、一般均衡モデルでは主要穀物以外の食料もモデルに組み込まれており、食料の間での代替関係が存在することがその主な理由であると考えられる。課題(2)については、メコン河流域の水資源量の推計を行うとともに、将来的な人口増加と経済発展により水質汚濁などの環境負荷が懸念されることから、流域の観測点5地点での年間合計負荷量とGISを用いた空間統計データを利用し線形モデルを推計し、メコン川流域の特徴を表した栄養塩排出原単位を推定した。また、原単位法により観測点毎の負荷排出割合の内訳を算出した結果、水質汚濁は地域の経済発展の状況を反映していることを明らかにした。課題(3)については、平成22年度に行ったラオスでの農家調査に基づき、ラオスの産業連関表及び社会会計表の再推計を行い、灌概整備によりコメの単収の増大が産業や農家を含む制度部門へ及ぼす経済的インパクトについて分析を行い、米の単収増加は農家の所得を増加させるとともに、経済発展に重要な役割を果たすことを明らかにした。なお、当初の計画では、水収支モデルと経済モデルを統合して、水資源配分をシミュレートするモデルを構築する予定であった。平成24年3月現在、モデルは完成しておらず、今後に残された課題となった点も付言する。
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