研究概要 |
本研究は,流域環境を巡り利害対立化している農林水産業のための政策理論(地域マネジメント政策の理論)を考察するものである。調査対象地区としては,北海道根釧台地の流域圏,山口県椹野川流域とした。環境再生活動のための地域マネジメント政策の理論を考察するためには,「利害対立の構造」,「地域マネジメント主体の組織化の道筋」,「環境再生事業の推進力」を明らかにする必要があると考えた。 本年度は,両流域に関する地域マネジメント主体の組織を明らかにすると共にそれがどのように形成されてきたかを調査分析した、両流域とも、組織化の原点は、二系統あることが分かった。 一つは、河川環境悪化に対してなんらかの対策を図ろうとする河口域の漁民の運動からである。上中流域の川辺や山林の荒廃を受けて、それへの対策を手がけようとした活動である。 もうひとつは、上中流域に暮らす市民の環境保全あるいは再生の活動である。河川を巡り,かつての地域の自然環境が失われた。そのことに対する危機意識から惹起した活動であった。 そして、以上の二系統の活動を受けて、基礎自治体や県行政などがさまざまな施策を活用して支援した。 こうして、流域環境の再生活動のネットワークが形成され、それが組織的になり、地域マネジメント主体となった。 ただし、この地域マネジメント主体は、異なるセクターの連帯組織であり、どこかが主導権を握って実践されているものでもなく,強い紐帯はない。それぞれの組織あるいは個人の参加意識に支えられた連帯である。 そのため、現研究段階では、これらの取組の推進力や継続性を担保する客観的な裏付けが明らかにされていない。 来年度は、「環境再生事業の推進力」について深く研究する。
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