研究概要 |
本年度は、北海道の過疎、高齢化,農山村集落をキーワードとして、関連する資料・文献の収集とともに、資料・文献を有する機関(国立国会図書館、東京大学付属図書館、札幌学院大学等)に赴き、文献の閲覧と複写を行った。この一連の作業は、次年次以降の実態調査を行うための、調査項目設定のための一助となるとともに、「北海道の集落」の基本性格の再確認にもつながった。 具体的な収集・複写資料として、(1)文献資料としては、本州と比較して集落形成の性格の異なる沖縄社会文化関連資料、北海道農山村関連資料、本州の過疎実態に関する資料、(2)複写資料としては、1970年代の過疎農山村や農業集落に関する雑誌論文(『北海道労働研究』『月刊福祉』『農林統計調査』等)を入手した。 これら収集・複写資料の分析を通して、第一に、1950~70年代の農業集落調査にあっては、「村落形成の事情がちがう」ことを理由に明らかに北海道を除外してきたこと、第二に、にもかかわらず「限界集落」論議においては、北海道もその範疇に含めて議論してきたことを再確認した。また第三に、1960~70年代における北海道農村の「挙家離農」の背景と、1990~2000年代の農村過疎化の背景はやや異なる状況があることも確認できた。さらに第四に、人々の定住条件として、地域労働市場との関わりは重要ではあるが、それ以上に、基礎的生活条件の個々人レベルでの確立がはるかに重要ではないかとの仮説を持つに至った。次年度では、特に第四の仮説を実証すべく、住民実態調査を実施する予定である。
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