本年度は、まず第一に、北海道北部の音威子府村において2010年に実施したアンケート調査及びヒアリング調査の分析を行うとともに、元農業者に対する補足的なヒアリング調査を行った。対象としたのは6世帯(うち5世帯が独居)であり、ここ数年の間に配偶者が亡くなった世帯も含み、現在の生活実態や問題点等をインタビューするのに適切であると考えた。調査は8月下旬に、本学学生や元議員、村職員の協力を得て実施した。調査の結果、(1)自治体による高齢者生活福祉センターに居住する高齢者は、加齢による身体面・精神面の衰えはあるものの、一定の健康を維持し、菜園等を続ける例も見られた。(2)周辺集落に居住する世帯にあっては、夫の死去にともなう村中心部への移住を余儀なくされる例がある反面、早くから独居となっている高齢者にあっては、そのまま住み続けるケースも見られるなど、個々のライフヒストリーや生活状況、自立度に応じた差異が見られた。本年度に取り組んだ第二の課題は、音威子府村と類似の自治体に対するアンケートを実施し、音威子府村の地域的な特質を明らかにしようとしたことである。対象としたのは、北海道留萌管内初山別村である。ここは、音威子府村とほぼ同緯度に位置するが、日本海に面しているという地理的な特徴を有するとともに、JR駅がなく、村内にコンビニもないなど音威子府村と異なった特徴を有する。人口は1500人弱、600世帯(2011年8月現在)と音威子府村よりも人口は多いものの、人口減少は同様に進行し、小学校が閉校した集落や商店を有しない集落も存在している。そこで、8月下旬から9月上旬にかけて、全戸にたいするアンケート調査票を配布し、結果分析を通して、特に高齢者の生活状況について明らかにしようとした。アンケートは548世帯に配布、うち292通を9月中に回収し(回収率53.3%)、分析をすすめた。以上の調査結果は、現地で報告するとともに、過疎論・限界集落論、そして「周辺」をキーワードとした論文としてまとめた。
|