(1)イギリスの法体系は慣習法(Common Law)と成文法(Statute Law)の両体系で構成される。歴史的には慣習法が先行するなかで、中世以降は成文法に基づく法体系が確立されてきた。土地法の分野ではそれほど単純な経過をたどったわけではなく、17世紀末の清教徒革命を経て成文法体系が形成された一方で、王権が復権する過程で慣習法に基づく裁判制度が成立し、両者の並立がしばらく継続し、近代に至り裁判制度としての統一が果たされた。イギリス土地法の基本的特徴をみると、法律体系について(農地制度を含めて)、単純化がよいと言うべきではないかもしれない。わが国の農地制度は農地法を基礎としつつ、農用地利用増進法(現在は農業経営基盤強化促進法)によって農地に関わる権利の移動規制を行ってきた。さらに農業振興地域の整備に関する法律によって土地利用の区域規制(ゾーニング)と農地の農外転用規制を都市計画法とともに実施してきた。筆者はこれを農地法制の「複々線的規制」として批判してきた。しかし、農地法制が歴史的事情の影響を強く受け、またその変更が漸進的に行うべきものであれば、一概に単純化がよいとする必要はないかもしれない。 (2)EnglandとWalesの伝統的土地所有パターンは、地主と小作農、または自作農であった。1970年代にはシティによる所有の比重が増大して企業経営による農業が拡大し、経営者による短期的利益の追求が、大農場において実施される懸念がでてきた。一部の土地所有者は税金の関係から農場を保有し、マネージャーの助けを得て経営した。多くの農業者は借地と自作地の両方を保有し、総所得の増大と規模の経済の利益を得るために農場規模の拡大を図った。 1983年にはEnglandとWalesの経営の5分の1、面積の3分の1が自小作農によって占められ、とくにEngland東部で大規模農場の増加がみられた。
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