研究概要 |
現在わが国の農業や食品企業は,下方硬直化した食品自給率や国際穀物価格・原油価格高騰,消費者の低価格志向の環境下で経営的に大きな問題を抱えている.そこで本研究は,和食を代表する食材の一つである大豆を事例として,大豆フードシステム(生産や食品産業、流通のそれぞれの現場)の持続生産可能な農産物・製品の適正価格帯を探ることにより,わが国にとって適切な生産要素の配分を提示し,わが国の食のあり方を明らかにすることを目的とした.とくに今年度は,消費者の低価格志向の程度とより正確な価格弾力性の計測とわが国の大豆フードシステムの計量的把握に焦点を当てた.前者では,行動経済学理論に基づいて,食と健康との乖離,地域食品の意識と行動の乖離を,時間選好率と危険回避度との関係性にて明らかにした.この経済的合理性と記述合理性のギャップが低価格志向を明らかにする鍵だと思われる.また流通段階の消費行動の把握のため,個店のPOSデータを入手し,大豆製品のより正確な価格弾力性を計量的に明らかにした.そこでは明らかに低価格商品を購入する消費行動が把握できたが、その傾向の中でも国産大豆を使用したこだわり商品を価格の高低に関わらず購入する層が存在することを把握することができ,国産大豆生産が生き残る様々な可能性を見いだした.後者では,国内外の生産現場の調査と統計資料の整理により,大豆フードシステムの計量的把握を行った.とくに国産大豆を使用した大豆製品のフードシステムを計量的把握に努め,そこには他の輸入食材で作られた商品と生産効率に違いがあることが明らかになった.そのためシステム全体としての効率性を測定し,国産大豆フードシステムの効率性をいかに高めていくかを次年度への課題とした.
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