インドネシアについては、インドネシアの社会経済調査(スサナスと略称される)の個別結果表を用いた次の分野の過去の分析結果について、利用データの期間を統一し、再計算をおこない、文章を書き換えた。すなわち、教育投資の収益率、教育における資本制限、学歴の世代間連鎖、女子高等教育のトリートメント効果、貯蓄のコーホート分析、および貯蓄関数計測に関する分野である。成果は以下のとおりである。インドネシア家計の所得格差の原因を教育格差に求めた。女子高等教育投資の収益率が高い点を再確認し、女子高等教育の就学率が低い理由として、教育に関する資本制限と、学歴の世代連鎖が存在する点を、数量的に再確認した。女子高等教育をおこなう必要性をトリートメント効果により、再度、数量的に明らかにした。貧困の悪循環を断ち切るために、教育投資の原資が必要である。投資の源泉となる家計の貯蓄に関して、コーホート分析と家計の貯蓄関数の計測によって、インドネシアの普通家計と貧困家計との貯蓄性向を明らかにし、貧困解消への糸口を探った。これらの成果は、『マイクロデータ利用によるインドネシア家計の数量分析-貧困解消にむけて所得格差の要因分析-』のタイトルのモノグラフとして、すなわち、西南学院大学の研究叢書(No.38)として上梓された。 タイについては、1994年、96年、98年、99年、および2006年のタイの社会経済調査の個別結果表を、入手することができた。インドネシアと同一の分析手法を用いた分析を開始したところである。
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