珍しい食材に関するwebアンケートや新品種ジャガイモを多数揃えた店舗での店頭観察およびインタビューなどの調査を行い新品種への購入意欲についての知見を収集した。結果として、サツマイモのベニアズマなどの主流品種との代替関係が強い品種は、適した用途や主流品種との味や食感の違いを示すことで購買を促しやすいが、紫サツマイモのように消費者がベニアズマ同様に扱えない品種には反応は薄く、当該品種の多様な使い方を示す必要があることが判明した。 また、彩りに加える使い方を紫サツマイモなどで推奨するには、一般種と同様の袋売りなどでは1回の購入単位が1回の使用量に比して多くなる。しかし、1種類のレシピを提示すれば調理者がアイディアを考える範囲を狭めてしまう傾向があったため、基本的なサツマイモ料理での使い方などを含めた利用提案をした場合の調査を行う必要が出てきた。 一方、主流品種との代替関係、既存類似品種との競合関係、品種特性から絞られる需要、以上の3点を把握すれば、特定の新品種に対してどのようなマーケティング戦略が有効か推測できることが判明した。2009年度の研究で得た知見は農商工連携など、生産と販売の間の調和がはかれるマーケティングチャンネルでは即に応用可能であるので、サツマイモの農商工連携を促すためのマニュアルに急遽、上記の内容を盛り込み、サツマイモ新品種向けのニッチマーケティング手法をマニュアル化した。 特に果肉に色があるイモ類に対して調査は不十分で、全般的に学術的な実証や一般化はこれからすすめる段階ではあるが、既存研究では新品種の普及戦略を明確に策定できる知見を得ておらず、今回の成果で情報伝達と少量流通に対応できる者がいれば、有効な普及方策が示せるようになった。
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