研究概要 |
大豆に関するフードシステムを対象に,大豆加工品の消費動向,大豆加工企業の製品戦略,流通構造,大豆生産技術,大豆作経営の経営対応等の観点から検討を行った.まず,消費及び製品開発に関しては,商品購買時に原料に注意を払う消費者とそうでない者があるため,国産大豆使用商品の消費拡大には業界団体等による積極的な売り場提案が必要となることや,大豆加工メーカーは,製品そのもののプロモーションよりも,消費者の健康意識や伝統食・食育への働きかけを通して市場の拡大を目指していることを明らかにした.また,大豆の品質評価に関しては,国の検査制度と加工業者の意識の間に不整合があり,その改善に向けては,豆腐の堅さや糖度などの成分情報の把握・表示が求められることを指摘した.一方,大豆作技術に関わって,単収が日本では横ばい傾向にあるが米国ではそれが着実に増収している要因を検討し,品種育成において,米国の多収に対して日本は加工適性が最優先課題とされていることや,米国では作付け品種は1~2年で交代するので収量性がより改善された品種が直ぐに導入されること,全般に早播化傾向にある米国に対して日本の播種時期は全般的に遅いなど,米国は,品種改良だけでなく,作期,栽植様式,病害虫・雑草・土壌水分・肥培管理,農業機械の改良など総合的な取り組みによる増収を達成していることを明らかにした.さらに,大豆作に係わる制度変化と経営展開の方向を整理し,大豆作収入が助成金次第で決まるという収支構造にあること,また,それは生産者の増収や品質向上へのインセンティブを低下させ,市場志向的生産対応を抑制することを明らかにし,今後の水田大豆作経営の展開においては,転作対応としてではなく,水田作経営の基幹部門の一つとして経営内に大豆作を位置付けていくことが重要であり,そのためには,大豆作の一層の生産性の向上が重要となることを指摘した.
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