研究課題
平成22年度は、大腸菌の流出特性の解明のための流出実験および堆肥化過程における大腸菌の生残実験に重点をおいて研究を進めた。東京農業大学富士畜産農場にて採取した牛糞、2週間発酵させた一次発酵堆肥、3カ月発酵させた二次発酵堆肥を実験で使用した。人工降雨装置によって60mm/hの降雨強度で2時間の降雨シミュレーションを行い、表面流出水と浸透流出水を採取し、採取した水中に含まれる大腸菌数を希釈平板法にて測定した。その結果、施用方法に関わらず、表面流、浸透流ともに牛糞がもっとも多くの大腸菌を流出し、分散分析の結果、有意差が見られた。また、すべての試験区において、表面流に伴う大腸菌の流出が浸透流出に伴うものを上回った。表面流出に伴う積算した大腸菌数の経時変化を見てみると、牛糞では表面施肥の場合に、一次発酵ではすき込みの場合に大腸菌の流出が多くなる傾向を示したが、二次発酵では明確な違いは見られなかった。また風乾処理が大腸菌、大腸菌群、一般細菌等の微生物相に与える影響の評価を試みた。その結果、牛糞においては大腸菌数、大腸菌群数は風乾の進行に伴い減少したが、完全な殺菌には至らなかった。一次発酵、二次発酵においては大腸菌は検出されなかったものの、大腸菌群数は風乾の進行に伴って、減少した。また、一般細菌数の変化について見てみると全ての試料において風乾の進行に伴い減少する傾向が見られ、一般細菌の減少による堆肥化への悪影響が懸念された。この結果から風乾処理は堆肥化初期ではなく、二次発酵にて行うことが望ましいと判断できた。更に石灰窒素添加が大腸菌、大腸菌群、一般細菌等の微生物相に与える影響について取り組んだ。その結果、発酵段階に関わらず、石灰窒素添加直後に大腸菌、大腸菌群は死滅した。また一般細菌については、発酵段階に関わらず大きな変化は見られなかった。各試料のpHを測定したところ、全ての試料で石灰窒素添加後に大腸菌、大腸菌群の生育限界であるpH9.0付近を示していた。これらのことから、石灰窒素添加は全ての発酵段階において一般細菌を維持しつつ、大腸菌、大腸菌群を死滅させるのに有効であると判断した。
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International Journal of Environmental and Rural Development
巻: 1-2 ページ: 84-87
巻: 1-2 ページ: 44-48
巻: 1-2 ページ: 107-111