研究概要 |
本年度は,トラクタ単体およびトラクタにロータリ作業機を装着した場合について,主としてタイヤのラグによる車体振動への影響を重点的に分析した。走行実験は,農学部付属滝沢農場のアスファルト路面上および同農場の幹線農道よにて実施し,エンジン回転速度と変速段を適宜調整して実施した。トラクタには前後左右および作業機上にそれぞれ3軸の加速度計を配置し,メモリーレコーダに記録した後,周波数分析を行い固有振動数等を分析した。この結果,以下のような知見を得た。 1)トラクタ単体の車体の固有振動数は,ロール,ピッチ,ヨーの各回転運動の固有振動数は,それぞれ5.38,9.75,4.00Hzと推定された。また,上下,左右,前後の並進運動の固有振動数は,それぞれ4.13,2.13,4.88Hzと推定された。こらの固有振動数は,前後輪のタイヤラグ数またはタイヤラグ数の1/2の周波数で励振され発生していた。得に後輪ラグ数の1/2の周波数が大きな影響を及ぼしているようであった。高速時におけるトラクタ車体の振動状態は,5.0m/s以上の走行速度において,上下並進運動では,3.5Hz~5.0Hzの間で広くスペクトル値の大きな振動が分布していた。得に最大速度付近では,最も大きなスペクトル値を記録した。また,前後の並進運動において,0.25Hzの低周波振動が発生していた。 2)ロータリ作業機を装着した場合は,作業機の固有振動数と思われる3.0Hz前後の上下振動が,広範囲の走行速度条件に見られ,得に高速域では振動のレベルが大きくなっていた。 3)農道の走行では,トラクタ単体では3Hz~5Hzでの上下振動のレベルが高かった。作業機装着時もアスファルト走行と同様,作業機の影響と見られる3hz付近の振動が広範囲の走行速度条件にて発現していた。 以上,規制緩和以降の高速走行可能なトラクタの車体振動について,初めて明らかにした。
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