研究課題/領域番号 |
21580309
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山下 淳 愛媛大学, 農学部, 教授 (40036405)
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研究分担者 |
杉本 秀樹 愛媛大学, 農学部, 教授 (40112255)
上野 秀人 愛媛大学, 農学部, 准教授 (90301324)
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キーワード | 水稲布マルチ / 無農藥・無化学肥料 / トラクタによる布敷設システム / 鎮圧ローラによる気泡除去 / 苗活着促進システム / 電動車 / 車両接地圧 / 土壌硬度 |
研究概要 |
「水稲布マルチ直播・有機栽培」とは、易分解性のセルロースを原料とした不織布(布マルチ)を利用し、水稲を無農藥・無化学肥料で栽培することにより、環境保全型農業の展開に資すると共に、安全・安心なコメを提供することのできる技術である。本栽培法で残された問題は、布マルチ敷設時に多大な労力を要すること、落水・着土後における苗の活着不良に起因する収量の低さである。本研究は、以上の2点を解決するため、(1)トラクタを利用した布マルチ敷設システムの開発、(2)電動車装着の鎮圧ローラを利用した苗活着促進システムの開発、(3)代かき時期と水稲の生育との関係を明らかにすることを目的とした。得られた結果は次の通りである。 (1)11kwの小型トラクタに2つの布ロールを前後に千鳥状に配置した敷設システムを開発した。鶏糞・菜種油粕施肥後、ロータリ耕うん一週間後の乾用状態下で敷設作業を行った結果、直進て作業のみ行う作業能率(理論作業量)は14.2a/hと高い値であること、ほ場端での回行や布取替えに多くの時間を要すること、その結果、ほ場作業効率は44.2%と低い値であることが分かった。 (2)本栽培では布マルチを灌漑水に浮かべ3葉期に落水・着土させる。灌漑中に発生した気泡のため、苗の活着が著しく阻害されることがある。そこで、鎮圧ローラにより気泡を除去し、布マルチを田面に密着させる苗活着促進システムを試作した。問題は、落水後の水田でけん引車両が沈下せずに走行できるかである。そこで、車両接地圧と沈下量の関係について調査した。着土後11日目における電動車(接地圧:67kPa)の沈下量は20mm程度、18日目では約15mmであった。この結果、土壌硬度が300kPa程度なら最低地上高90mmの電動車は十分走行できると考えられた。本システムの実用性を調査した結果、気泡の大半は除去されること、踏み倒された苗は作業3日後に完全に復元していることが観察された。 (3)代かきを布マルチ敷設2日前に行うと、土壌がぬかるみ、作業性が低下する。そこで、敷設10日前の代かきの場合と水稲の生育・収量について調査した。その結果、敷設10日前の代かきでは土壌表層部の硬度が高くなり、作業性は向上した。しかし、収量は2日前区より12%低かった。土壌無機態窒素が低く推移したことから、葉面積の展開が抑制されて乾物生産が不足し登塾歩合が低かったことに起因したと考えられた。
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