研究概要 |
生物多様性を維持した保全耕うん圃場では、物理的に安定した微小団粒の発達が認められ、有機物分解を遅延させるという報告を受けて,保全耕うんの炭素隔離機能を,より正確に定量・定性的に評価することを目的として実験を行ってきた.具体的には,生物多様性を維持した栽培体系(局所耕うん栽培)における有機物の分解速度を,分子構造特性(官能基種類とその配分)をFTIR法によって評価する方法と可能性を以下の過程で検討した. (1) 耕うん栽培体系と有機物の分子・構造形態変化との関係について 土壌の鉱物性粒子がFTIR法による有機物の構造解析の妨げとなることがわかり,保全耕うん圃場と並行して進めていた落ち葉処理槽の試料を用いて,FTIR法による有機物の分子・構造形態変化過程を評価した.その結果,処理槽の深さによって有機物の官能基が異なることが分かった. (2) 土壌の微小団粒の形成と安定性,有機物の分解速度との関係について 微小団粒中の有機物をその構造を破壊することなく抽出する方法について,検討中である. (3) 有機物の炭素隔離機能と圃場・土壌の生物多様性との関係を明らかにする. (2)の結果が得られ次第,圃場の土壌の解析に入る予定である.加えて,圃場ならびに落ち葉処理槽の実験で得られたデータを既往の数値モデルに組み込み,耕うんによる炭素隔離機能との関係性の解明を試みる予定である.
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