研究概要 |
本研究は,従来の紫外レーザーの替わりに紫外LEDを励起光源として植物葉蛍光を取得し,植物生育診断を行う手法を確立することを目的としている。我々は,375nmで発光するNSPU510CS(日亜化学製)と400nmで発光するNS400L-ERLM(Nitride Semiconductors製)を組合せたLED光源の開発し,僅かな可視域発光を除去する為の光学フィルター(シグマ光機製BLF-370B等)を併用して放射照度30Wm^<-2>以上で励起することで,レーザー励起と同等に様々な植物葉の蛍光を測定できることを明らかにした。このLED光源は,バッテリー(Panasonic製HHR-3MVA×16直列)を用いて24時間以上安定点灯が可能な他,面光源としてのメリットを生かし広範囲を低照度で励起することで,表皮が未発達な作物葉等に損傷を与えず蛍光測定が可能である等,レーザー光源に対する優位性も見出すことができた。 また,マクロレンズ,イメージング分光器,高感度CCD,画像解析装置を組合せて多点蛍光スペクトル測定装置を開発し,専用の試料ホルダーに固定した葉一面をLED光源で励起することで,葉の各部位における蛍光スペクトルを同時に測定することに成功した。本装置を用いて,ラッカセイ葉の一部にUV-Bストレスを負荷して蛍光スペクトル変化を測定したところ,次の知見が得られた。 (1)ストレス負荷直後は,ストレス負荷部のクロロフィル蛍光が正常部より徐々に小さくなるが,一定時間暗所に置くとストレス負荷部のクロロフィル蛍光が増加し,正常部よりも大きく観察される場合がある。 (2)UV-Bストレス負荷に伴う450nm付近の蛍光増加(フラボノイド増加に起因すると考えられる)は,ストレス負荷部に一様に生ずるのではなく,局所的に縞状に出現する。 以上のことから,本研究により開発した紫外LED光源と多点蛍光スペクトル測定装置を用いて,レーザー励起では得られない葉全体のストレス反応が観察可能となり,植物生育診断の精度向上に寄与することができた。
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