近接リモートセンシングにより、野外に栽培された穀実作物の各収量構成要素、ならびにこれらに影響を及ぼす生産構造すなわち葉面傾斜角分布などの形態・構造情報を分光光学的・画像工学的にモニタリングするための新たな光学計測指標(群)を開発する。夜間計測、中間赤外域、偏光度画像およびテクスチャ解析など、これまで一般に観測がなされていなかった時間帯、波長帯域など未開拓なキーテクノロジー(特殊観測技術)に着眼する。穀実作物の収量関連形質およびそれらに影響を及ぼす形態学的データを取得する手法を探索・開発するとともに、将来は栽培技術や生理生態研究および育種現場への活用などを目指す。H22年度は前年までに開発した偏光分光画像を野外で計測する装置により、コムギの施肥量が葉群形態に及ぼす変化を遠隔画像として捉える実験を行い、成果を論文発表した。さらに上空からの作物種の判別などへの適用可能性を検討するための幼植物によるモデル実験を実施し、垂直葉型と水平葉型作物の画像判別の可能性を示唆する結果を得て論文投稿した。中間赤外分光による穂密度、穀粒成熟度等イネ収量関連形質の野外推定法は関連特許が登録された。デジタルカメラと太陽光センサを組み合わせた定点連続スペクトルカメラにより、イネ、ムギの反射率画像を撮影・蓄積し、特にイネの葉面積の非破壊推定法に関する新知見を得て、論文発表した。また前年度に特許申請した夜間フラッシュ撮影が可能な直下視型定点撮影システムにより、各種作物のフェノロジー(草丈と乾物重などの季節的推移)を高い精度で推定可能なことを示し、新規性の高い光学指標を国際誌上で提案した。さらに水面反射を抑制する偏光フィルタ付きカメラで富山農林水産総合技術センター内の水田を定期的に撮影し、斜方視画像を二次元フーリエ変換処理して得られるパラメータからイネの生育ステージを推定する手法を確立し学会等で発表した。
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