研究課題
高圧処理は、加熱に代わる新たな食品加工技術として,近年,世界中で注目されている技術であり、水などの液体を介して1,000気圧(100MPa)以上の圧力をかける日本において提唱された新技術である。食肉科学分野でも食肉の軟化促進を引き起こし、筋原線維タンパク質の変化に伴う軟化効果がその要因であることが示されたが、筋肉内結合組織に及ぼす高圧処理の影響については全くわかっていない。我々は、単離した筋肉内結合組織すなわちコラーゲン線維に高圧を施す予備実験を行ったところ、高圧処理は筋肉内結合組織の軟化を引き起こすことを見出した。したがって、本研究は高圧処理による筋肉内結合組織の軟化メカニズムの解明を目的とし、本年度では、高圧処理による筋肉内結合組織の軟化の確認・評価、高圧処理による筋肉内コラーゲンの熱安定性の評価、高圧処理による筋肉内コラーゲン線維立体構築状況の解析を行った。得られた結果の大要は以下の通りである。(1)筋肉の硬さと同様に筋肉内結合組織の硬さも100MPa以上で有意に低下し、400MPa以上の高圧処理では未処理から約30~40%軟化した。(2)筋肉内コラーゲンの熱安定性をコラーゲンの加熱溶解性ならびにDSCから解析した。コラーゲンの加熱溶解性は200MPa以上の処理で有意に上昇し、またDSC解析から、約300MPa以上の高圧処理で筋肉内コラーゲン線維の熱安定性の低下が起こることが示された。(3)SEMを用いて高圧処理による筋肉内コラーゲン線維立体構築状況を観察したところ、筋内膜コラーゲン細線維網には顕著な変化は認められなかったが、150MPa以上の高圧処理で筋周膜-筋内膜接合部の間隙が大きくなり、500MPaの高圧処理では筋周膜コラーゲン線維間の解離が認められ、高圧処理に伴う筋肉内コラーゲン線維立体構築の脆弱化が示された。以上の結果は、高圧処理が筋肉内コラーゲン線維の熱的および構造的脆弱化を引き起こすことで筋肉内結合組織の軟化を誘導することを示唆する。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (20件) 備考 (1件)
食品工業 53
ページ: 34-40
http://researchers.adm.niigata-u.ac.jp/R/staff/?userId=612